1.親水性ビニルポリマーを基材としゲル表面にのみイミノ二酢酸基を有する高分子のZr(IV)錯体は、酸性領域でフッ化物イオンを吸着し、弱アルカリ性でこれを脱着した。いずれの反応も極めて迅速であった。 2.このフッ化物イオンの吸着反応の機構を検討し、強酸性ではイオン交換的に、弱酸性では付加的にフッ化物イオンが高分子相に吸着すること、吸着されたフッ化物イオンは弱アルカリ性で水酸化物イオンとの混合配位錯体の生成によって脱着すること、また酸によって出発の錯体へと再生されることがわかった。 3.pH2.5でのF^-の吸着に対する見かけの定数は10^<5.3>であった。Zr(IV)に対して20%以下のフッ化物は定量的に吸着できる。20%以上になると回収率は低下し、更に多くなるとZr(IV)が漏出した。 4.バッチ法による吸着実験では、10^<-4>mol dm^<-3>レベルのフッ化物イオンを定量的に吸着でき、他のハロゲン化物イオンやアルカリ及びアルカリ土類金属などの陽イオンの影響をほとんど受けないことが明らかとなった。しかしながら、10^<-5>mol dm^<-3>以下では吸着率が低下した。 5.この点を改善するために流れ系を用いる吸着を試みたところ、少なくとも10^<-6>mol dm^<-3>のフッ化物イオンを93%以上の高い一定の比率で吸着させ、100倍以上に濃縮することが可能となった。 6.Zr(IV)-セミキシレノールオレンジ錯体を用いるF^-の吸光光度定量のフローシステムにこの高分子錯体を含むミニカラムを組み込むことにより、共存する陰陽イオンの妨害を軽減することができた。 7.ヨウ化物や臭化物イオンの吸着体となる高分子錯体の調製法及びその性能を同様にして評価した。Hg(II)を含む高分子錯体は広いpH範囲でハロゲン化物イオンを定量的に吸着するが、これを脱着する条件が現時点で見つかっていない。
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