1.血清分離管の違いによる血清中ケイ素濃度の変動: 血液をそれぞれ血清分離管に採血し血清を分離し、ICP発光分析法によりケイ素濃度を測定した。血清分離管の違いにより血清中のケイ素濃度は大きな差異が認められた。このことは血清分離管からのケイ素の溶出、あるいは血清中のケイ素の血清分離管への吸着を示している。したがって、血清中のケイ素濃度と腎機能の指標とされている血清中のクレアチニン濃度の関係を検討するためには、少なくとも血清分離管からのケイ素の溶出の少ないものを使用する必要がある。 2.血清中のクレアチニン濃度とケイ素濃度について: 血清中のケイ素濃度はクレアチニン正常群で0.14±0.3ppm、クレアチニン高値群では2.8±1.6ppmで、0.1%以下の危険率で有意な差が認められた。クレアチニンとケイ素濃度との相関は正常群では認められないが、高値群においては0.1%以下の危険率で有意な相関が認められた。しかし、ケイ素濃度を腎機能の指標として利用するためには問題点が多い状況である。 3.血清中のケイ素の存在形態: 血清中のケイ素濃度はクレアチニン高値群において高いことから、透析患者の透析前のプール血清試料を用いて研究を行った。分画分子量3万および1万の簡易微量濃縮器を用いて、分画分子量1万以下の血清ろ過液を採取し、そのケイ素濃度測定したところ6.36±0.87ppmであった。もとのプール血清中のケイ素濃度は9.17±1.80ppmであったので、血清中のケイ素の約7割が分子量1万以下の化合物であり、残り約3割は分子量が1万以上の化合物であることを示唆する興味深い結果が得られた。 今後、血清分離管からのケイ素の溶出の問題や使用器具類からの汚染などの問題を克服して、より詳細な実験を行い血清中のケイ素の存在形態の解明を進めていきたい。
|