研究概要 |
本研究は抽出側と逆抽出側にそれぞれテフロン相分離器を備え,分離された有機相をポンプで相互に送液し,その送液途中で紫外可視検出器で検出しながら,分離状況を確認するシステムを利用している.抽出側と逆抽出側の水相の条件をコントロールすることにより,抽出されない成分と抽出される成分,更に逆抽出される成分とされない成分,従って3成分の分離が可能となる.このような分離法の応用例を示すために,比較的分離の困難な鉄,ニッケル,コバルトの分離を試み,ピリジルアゾナフトールをリガンドとし詳細に実験条件を検討した.その結果,抽出速度の遅いニッケルは抽出側水相に残り、鉄は逆抽出側水相に,コバルトは有機相にそれぞれ完全に分離された.有機溶媒はクロロホルムが使用され,逆抽出溶液は6N硝酸溶液が使用された.従来法によるニッケルの抽出率は数%から数10%であったが,過剰試薬が同時に逆抽出されるため,抽出速度の遅いニッケルは全く抽出されない結果が得られた.平衡条件と反応速度の条件を有効に利用できた結果である.このような条件での分離を考察するために,“みかけの分配比"の概念が検討された.また本法は抽出率の悪い成分に対しても,100%の回収率を得ることができる.その条件は逆抽出側の分配比が著しく小さい場合であり,その詳細な条件が明らかにされた.更に抽出率の悪い試料溶液に適用できることから,強アルカリ溶液中の微量不純物の除去法を検討した.その結果鉄,バナジウム,ガリウムは分離できなかったがコバルト,ニッケル,マンガン,銅は1NのNaOH溶液から分離できた.コバルトは有機相に残り,他はpH1以下の水相に逆抽出された.逆抽出時間や効率はリガンドの種類と濃度が大きく影響した.
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