研究概要 |
アズキゾウムシを材料に、野外系統と実験室系統を用いて、適応度が密度に依存しない移動分散・定着期、密度に依存する個体群の成長・飽和期の各々について、どのような生活史形質の変化が適応度に大きく貢献するかを感度分析により調べた。平成5年度は、主に密度依存的な時期の適応度の感度分析を行った。密度依存的な適応度の尺度としては個体群平衡値(環境収容力を反映)を用いた。豆の外側の産卵と豆の内側の幼虫の発育における競争を分け、各々の初期密度に対する個体群密度の反応を差分ロジスティック式で記述した。それらを結合して1世代を通じた個体群の密度反応としての増殖曲線を計算し、その平衡点が敏感に反応する個体群パラメータを感度分析により抽出し、さらに分散分析によりそれらの主効果・交互作用効果を検定した。 その結果、野生系統と室内系統の比較では豆の外側の最大孵化卵生産数の主効果のみが有意に強く個体群平衡値に作用した(Shimada & Tuda,Oikos投稿中)。それに対し室内系統で温度条件を変えた場合には、むしろ豆の内側の新成虫生産最大数の方が個体群平衡値に寄与した(Tuda & Shimada,Res.Popul.Ecol.印刷中)。系統間の差は密度依存的な自然選択による適応の結果であると思われる。さらに、孵化卵生産・幼虫成長・成虫産卵期の各過程を密度依存的なLeslie行列で表し、個体群動態の振動と安定性を遅れの密度効果の観点から解析した(Shimada & Tuda,Oecologia投稿予定)。また、移動分散・定着期の適応度指標である内的自然増加率が成虫期のいつの齢別生存率と齢別産卵数に敏感かをLeslie行列の固有値感度として分析中である(投稿準備中)。
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