研究概要 |
本研究は,(1)自然湖沼である仁科三湖(青木湖,中綱湖,木崎湖)において,環境を異にする湖岸に定点を設定し,定期的にサンプリングを行い,出現するミジンコ類の種ごとの生態を明らかにする,(2)日本列島の広い地域からサンプリングして分布状況を明らかにする,の二つを目的に計画された.(1)に関しては,青木湖に2点(ヨシ帯,砂礫底裸岸),中綱湖に1点(水草帯),木崎湖に2点(砂礫底裸岸,泥底裸岸)の調査定点を設定し,これまでに平成5年8月,11月,平成6年2月の3回の調査を実施した.その結果,湖岸の定点に出現したミジンコ類は17種を数えている.調査は継続中で,今後調査の頻度を多くして,季節的な変動を把握する予定である.また,定性的なサンプリングには問題はないが,定量採集に関してはなお装置の改良の必要のあることが判明し,現在方法等を検討中である.(2)に関しては,今年度は北海道東部の自然湖沼(阿寒湖,オンネトー,シラルトロ湖,塘路湖,達古武湖)および九州南部の自然湖沼(池田湖,鰻池,薩摩湖,白紫池,六観音御池)においてサンプリングを行った.この中で特筆すべきことは,シラルトロ湖,達古武湖において,ノコギリミジンコ属の一種で,未記載種であるEurycercus sp.が採集され,仁科三湖のものと同一の種であることが確認された.できるだけ早い機会に新種として記載する予定である.また九州南部の湖沼では,薩摩湖から熱帯から亜熱帯の湖沼に出現するAlona karuaが採集され,ミジンコ相からみればこの地域が亜熱帯地域に属することが明らかとなった.
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