本研究は、(1)自然湖沼である仁科三湖(青木湖、中綱湖、木崎湖)において、環境を異にする湖岸に定点を設定し、定期的にサンプリングを行い、出現するミジンコ類の種ごとの生態を明らかにする、(2)日本列島の広い地域からサンプリングして分布状況を明らかにする、の二つを目的に計画された。(1)に関する今年度の計画に関しては、平成7年7月の集中豪雨によるJR大糸線および国道148号線の不通によって計画を断念せざるをえない状況となり、計画を遂行することはできなかった。(2)に関しては、今年度は東北地方北部の湖沼群(八甲田山、十和田湖、北津軽郡の湖沼群)においてサンプリングを行った。サンプリングは秋から冬にかけて行ったが、これまでのところ特筆すべき種は検出されていない。この3年間に北海道北部から九州南部まで、主要な自然湖沼でのサンプリングを終え、日本列島における沿岸性ミジンコ類に関してはまとめることが可能となった。また昨年に引き続き、別途研究費(日本学術振興会国際共同研究、研究代表者谷田一三大阪府立大学助教授)を使用してロシア極東地方の湖沼において同様の調査を実施し、日本列島の枝角類の分布に関する考察が可能となった。3年間にわたるサンプリングによって採集された標本の一部の顕鏡を終え、同定された種に関してパソコンへのインプットを行って、データベースを作成しつつある。これまでの知見を加え、その一部は本科研費研究成果報告書としてとりまとめ、印刷した。今後も引き続き本科研費によって作られた標本に基づく研究成果は、まとまり次第随時学会等での口頭発表、研究論文として学会誌等への投稿を行う予定である。
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