同所的に生息するが、形態的に区別のつかない染色体数の異なる2種のヨモギハムシ群の相互作用を知るため、野外での放虫実験と室内での行動観察実験を行った。 染色体数の異なるヨモギハムシ種群の成虫を野外に放虫し、観察する実験を2地点で実施した。1地点での調査では、染色体数の多い種がわずかに早く繁殖期に入ること、染色体数の異なる個体群間での交尾も3割程度の割合でかなり頻繁に観察されることが分かった。他の1地点での調査は、1993年が冷害年であったため、ヨモギの枯死が早く、長期間の野外観察は十分な時間が取れず、不十分な結果になった。 飼育個体群を用いた室内での行動観察実験では、染色体数の多い種の成虫は非繁殖期、繁殖期とも植物体上にいる個体が多かった。一方、染色体数の少ない種の成虫では非繁殖期には地上部や植物体の下方で活動する個体が多かった。繁殖期には、植物体上で活動する個体が多く、染色体数の多い種と目立った違いは認められなかった。 繁殖期と非繁殖期の違いでは、繁殖期には非繁殖期に比べ活動個体の割合が高かった。特に繁殖期には葉裏で休息している時間が減少し、交尾、闘争に費やしている時間が多いのが特徴であった。産卵は、どちらの種でも卵塊で数日間隔で行い、多数回繰り返したが、染色体数の少ない種の方が繁殖期間が長いと思われた。このように、両者には若干の微妙な違いがみられ、これらが繁殖戦略の差となって表れている可能性が高い。この点については、飼育個体群を作成しつつあり、更に検討を進めようとしている。 実験個体群の作成については、染色体数の異なる種の交雑個体群を作成すべく、飼育を続けている。
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