研究概要 |
外部形態に殆ど差の見られない染色体数の異なる種群(染色体数2n=31,32の種と染色体数2n=41,42の種:前者を染色体数の少ない種、後者を多い種と呼ぶ)の繁殖戦略の違いを解析するため、本年度は染色体調査によるこれらの個体群のマクロな分布調査の補足調査と、成虫の日周活動調査や繁殖期の染色体数の異なる個体群の発生消長、繁殖様式、交雑の起こり方について野外個体群を用いて補足的な解析を行った。 マクロな分布の補足調査では、周囲の個体群の色彩型頻度のかなり異なる長野県軽井沢町の個体群、色彩型頻度が大きく変わる境界点付近の静岡県西部から愛知県東部の色彩2型の頻度調査を行った。長野県の調査では軽井沢地域のヨモギハムシは染色体数が少ない種であるにもかかわらず銅金型の頻度が非常に高く特異な傾向を示した。東海地方では、染色体数は全て少ないものであったが、浜名湖の南北、明石山脈の南側を境に非常に近い距離で色彩二型の頻度が大きく変化していた。この原因として地史的に由来の異なる個体群の存在している可能性が現時点では最も高いと考えられた。 染色体数の異なる種群の混生地で染色体数の異なる種の混合個体群を作成し、成虫の発生消長、繁殖行動、種間交雑の状況などを調査した。その結果染色体数の多い種は繁殖期が早く、寿命も比較的短かった。一方、染色体数の少ない種は繁殖期が遅いが、繁殖期間も長かった。繁殖の状況は種間交雑がかなり見られたが、染色体数の少ない種の雌と多い種の雄の交雑が非常に多いのに対し、染色体数の多い種の雌と少ない種の雄の交尾は非常に少なく、種間交雑の生じ方は非常に非対称てあった。この結果は、両種の繁殖期がずれるほうに自然選択が働くこと、染色体数の多い種の方が不利益を被る可能性が高いと考察された。
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