ヨモギハムシ種群の染色体数の異なる2種についてその繁殖戦略の違いを解析するため、染色体数の異なる個体群と色彩二型のマクロな分布調査を行うとともに、成虫の日周活動や繁殖期の発生消長、繁殖様式、交雑の起こり方について野外個体群と恒温条件下の個体群で解析した。 マクロ分布の補足調査ではこれまで見られていないような銅金型の高頻度の個体群(染色体数の少ない種で)が軽井沢町の複数の地域でみられた。東海地方の補足調査では、浜名湖の南北の線と赤石山脈の山頂のラインを結ぶ東側の地域では銅金型の頻度が高く、西側では低くなるはっきりした境界がみられた。これは地史的に由来を異にする個体群の存在を示唆した。 染色体数の異なる種の非繁殖期の日周活動調査より、染色体数の多い種は一日中植物体上に居る傾向が強いのに対し、染色体数の少ない種は明期になると急に植物体上から地上あるいは地中に移動しそこにとどまる傾向がはっきりみられた。このことは前者は日射の強い開けた土地では体温の上昇により活動が妨げられ、地上に留まる後者より不利となって森林内や山岳域に生息することになっていると考察された。 染色体数の異なる2種の混合個体群の野外調査では、染色体数の多い種の繁殖期は早く比較的短期間に移るのに対し、染色体数の少ない種では繁殖期は長く遅くまで繁殖を続けた。繁殖行動の起こり方は、早秋は染色体数の多い種の種内交尾と染色体数の少ない種のメスと多い種のオスとの交尾が非常に多くみられたが、その逆の種間交雑は非常にわずかしかみられなかった。このように染色体数の異なる2種の混合個体群では交雑はかなりみられるが、異種間の交雑の起り方は非対であり、このことは2種の繁殖期をずらせす方向に働くとともに、染色体数の多い種に不利に働く可能性が高いと考えられた。これが側所分布と関連するだろう。
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