研究概要 |
1993〜1994年にかけて沖縄でアリ類のフィールド調査を行なうとともに、2型雄の繁殖戦略を解明するために,飼育、観察、実験を行ない以下の知見を得た。 1.トビニセハリアリにおいて、無翅雄に極めて顕著なサイズ2型があることを発見した。大型無翅雄同士あるいは小型無翅雄同士は、巣内で激しく戦い、典型的には各巣は単雄複雌のハレムを形成するにいたる。大型無翅雄と小型無翅雄が同一巣に出現する場合は、それ等の間に戦いは見られず、前者はファイタ-、後者は雌ミミックと考えられた。 2.クロニセハリアリでは、両性に翅型2型がある。次のような新知見が得られた。 1)本種は多女王、他巣性コロニーを形成する。2)無翅生殖虫はシ-ズンの前半に出現し、巣内交尾を行ない、有翅生殖虫はシ-ズンの後半に出現して、結婚飛行後巣外で交尾する。3)無翅雄は交尾の2時間も前からマユに抱接し、女王の羽化を待つ。交尾時間も極めて長く、交尾栓の機能を果たしていると考えられた。無翅雄のマユに抱接した場合、マユ内の雄は50%の割合で死亡した。これはライバル雄の排除と考えられる。 3.アシジロヒラフシアリにおいて、有翅雄および無翅雄の交尾器を比較したところ、それらの間に1.8倍以上のサイズ差があった。有翅女王と無翅女王の交尾器のサイズ差もほぼ同様で、有翅生殖虫と無翅生殖虫の間の交尾ができないまでに交尾器の分化が進んでいることが明らかになった。 4.沖縄本島のアリ群集を調査し、森林地域では特有種などの狭分布種、単女王性種が大きな比率をしめ、一方、オープンランドでは放浪種など広分布種、多女王性、多巣性種の比率が高いことが明らかになった。 5.今回研究対象とした2型雄を有する種において、巣内交尾(同系交配)が雄の多型や多彩な行動分化の極めて重要な要因であることを論究した。
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