研究概要 |
ダイズの主要な種子貯蔵タンパク質の一つであるβ-コングリシニンはα,α'およびβの3つのサブユニットを持つ。ダイズ植物を硫酸イオン欠乏条件下で栽培するとβサブユニットの蓄積が特異的に増加し、一方ダイズ未熟子葉をメチオニン存在下で培養するとβサブユニットの発現が抑制される。βサブユニット遺伝子のプロモーター領域と大腸菌β-グルクロニダーゼ(GUS)の構造遺伝子との融合遺伝子を導入してトランスジェニック・シロイヌナズナ株、SNTβ3を得た。 一方、メチオニンのアナログであるエチオニンに対して耐性となった突然変異株(mtol-1変異株)ではロゼット葉の遊離メチオニン濃度が野性型株に比べて増加していることを既に見いだしていたが、種子の吸水後における遊離メチオニンの濃度および総量の経時変化を詳しく解析したところ、開花後40日目の植物体では、茎頂部と未熟果実に野生型の約5倍の遊離メチオニンの蓄積が見られた。 SNTβ3株とmtol-1変異株とを掛け合わせ、F2世代以降で導入遺伝子に関しても、メチオニン過剰蓄積変異に関しても共にホモ接合体となった株(SNTβ3mto株)を確立すると、種子におけるGUS活性は野性型バックグラウンドの場合の約1/40に抑えられていた。また、SNTβ3株とmtol-1変異株との間で正逆の掛け合わせを行ない、得られたF1種子におけるGUS活性を測定した。その結果、mtol-1変異株を母株としたときにのみGUS活性が抑えられた。このことは、種子貯蔵タンパク質遺伝子の発現が母株から転流したメチオニンによって制御されることを示している。
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