研究概要 |
平成5年度の研究において,キュウリの光化学系Iの光・酸素障害がキュウリの光合成系の低温順化を妨げていることが明らかになった.従来,光化学系Iは一般に光化学系IIに比べてきわめて安定だと思われており,生体内でこれほど光化学系Iが傷むということは本研究によって初めて明らかにされた. 具体的には,これまでに, 1.この低温障害が10℃以下の低温のもと,ごく弱い光(約50μmol m^<-2> s^<-1>)を数時間葉を照射することで起こること, 2.窒素気流中の光・低温処理ではこの阻害が起こらないこと, 3.阻害の原因は光化学系Iの鉄-イオウセンターの酸化およびP700そのもの破壊によること, などが明らかになっている. 以上のように光化学系Iの阻害には,(活性)酸素が関与することが明かであり,多くの研究によってすでにかなりの部分が明らかにされている光化学系IIの阻害とはかなり異なる現象である. また,従来,キュウリなどの低温感受性植物の光合成系の低温障害のメカニズムとして様々なコンポーネントの障害が提唱されていたが,本研究によって, 4.光化学系Iの阻害が葉の光合成活性の原因であること, が明確になった.
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