1.低温感受性植物の光合成器官における低温障害に関して: 一般に、ストレスに最も弱い光合成系のコンポーネントは、光化学系IIの反応中心を擁するD1蛋白であると考えられている。しかし、代表的な低温感受性植物であるキュウリの葉を光の存在下で低温にさらした場合、最初に傷むのは光化学系IIではなく光化学系Iである(昨年度の成果)。本年度の研究では、初発傷害部位が光化学系Iのなかでも反応中心のacceptor sideにあること、キュウリ以外の低温感受性植物でも、初発傷害部位が光化学系Iであることが分かった。なお、これらは、東京大学・理学系研究科・園池公毅氏・基礎生物学研究所・伊藤繁氏らとの共同研究の成果である。 2.高山植物の光合成の律速要因に関して: 高山では、気圧の低下にともなって二酸化炭素分圧が低下し、光合成を抑制していると考えられている。しかし、実際には酸素分圧も低下するので、光合成に対する気圧低下の効果は単純ではないはずである。そこで、RuBPカルボキシラーゼ/オキシゲナーゼのキネティスクのデータをもとに、温度と気圧の光合成に及ぼす影響を定量的に求めた。その結果、15℃以下の低温では、光合成速度に対する気圧の低下の影響はごく小さい事が明らかになった。
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