光による位相変化過程にRNA合成が必要であることを示した。これは5-アザシチジンを用いた薬理学て研究とmRNA量を測定した結果である。また他の類似薬剤の効果との比較から、この結果を確かめた。この結果は光による新たな遺伝子発現が考えられ、差分法を用いて光依存で発現する遺伝子の同定を試みたが、成功しなかった。その理由の一つは光によって分生子形成が促進され、位相変化過程に特有に発現する遺伝子を確認できないことがある。 同時にこの位相変化過程がカルモデュリンアンタゴニストによって阻害されることを発見したので、この薬物に対して感受性の異なる変異株の分離を試みた。その結果、耐性株を8、高感受性株を3株分離することに成功した。この中にはカルモデュリンアンタゴニストによる光位相変化の阻害を起こさないものも数株含まれていた。また一つの遺伝子の変異によって、カルモデュリンアンタゴニストによる分生子形成リズムの周期の短縮、位相変化、また上に述べた光による位相変化の阻害の3種の阻害効果が完全に抑制される変異株も発見できた。生物時計の性質を決定するこれらの変数が、一つの遺伝子の機能によって制御を受けている可能性がある。またそのほかにも光による位相変化の阻害が抑制された変異株も数種同定できた。したがってこれら変異株をもたらす遺伝子の同定とその機能の解析を行えば、光による位相変化に関与している遺伝子の決定に役立つものと考えられる。このような観点から現在これらの変異株の解析を行っている。 当初の差分法による遺伝子の同定は成功しなかったが、上に述べた変異株の解析は光受容系と生物時計を結ぶ過程の解析により有用な手法であると考えている。
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