平成5年度までの研究によって以下のことが明らかになった。 1.ERは葉緑体の周囲を袋状に覆っているが狭窄部には存在しない。 2.葉緑体のくびれは狭窄部の細胞質側に液胞が形成され、増大することと並行して進行する。葉緑体狭窄部付近では細胞質内の多数の小胞が液胞と融合していた。 3.上記の液胞は断面で見ると楔状になって葉緑体狭窄部に侵入する。その形状から、液胞の楔状部位の先端と葉緑体狭窄部を架橋する何らかの構造があってその中にアクチン繊維様の収縮性の構造が含まれていると推察される。 4.葉緑体のくびれの進行に伴う液胞の成長をノマルスキー微分干渉位相差顕微鏡によって観察し、顕微鏡用ビジコンカメラによって連続的に記録することができた。液胞の成長の初期においては、数個の球形の小胞が葉緑体狭窄部付近の細胞質に存在するが、この時期には葉緑体狭窄部の最深部とは特に連絡がないように思われる。液胞の成長過程と葉緑体のくびれの進行との関係については平成6年度においても研究を継続かつ進行させる。 「平成5年度までの研究経過」で述べたように、当初に研究計画のかなりの部分は達成できたと考えられる。しかし、いくつかの点で課題を残した。 タンニン酸-グルタールアルデヒド-四酸化オスミウムによる固定法によってミカヅキモ細胞を良好に固定することができるようになったが、アクチン繊維を同定するには至らなかった。これについては、現在、急速凍結法に適した他の生物材料によっても検討する計画である。また、免疫学的方法による検討は平成6年度の課題である。
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