研究概要 |
脊椎動物の生殖内分泌系におけるペプチドホルモンの受容体の標的器官における発現調節とホルモンと結合した受容体の標的細胞内での挙動を解明することを目的に本研究を開始し、本年度には次のような成果が得られた。 1)片側潜伏睾丸を実験モデルにしてラットの精巣で精巣内温度による濾胞刺激ホルモンと黄体形成ホルモン受容体のmRNAの発現様式の変化をnorthern blotで調べた。腹内睾丸では両受容体共にその発現量が陰嚢内睾丸と比べて、潜伏睾丸手術4週間後には顕著に増加していた。特に、興味深いことは、黄体形成ホルモン受容体のmRNAの分子サイズの多様性の変化であった。陰脳内睾丸ではmRNAのサイズの多様性は卵巣の物とは異なっているが、腹内睾丸ではその分布様式が卵巣の様式に変わっていた。片側潜伏睾丸ラットでは陰脳内睾丸と腹内睾丸は同じ内分泌的環境に接しているので、精巣での核細胞同士の相互関係によって現れる現象であることが示唆される。(現在論文投稿中) 2)脳下垂体のあらゆるホルモン分泌細胞に分化し続けるラットの脳下垂体腫瘍細胞(RC-4B)の生殖腺刺激ホルモン産生細胞の研究モデルとしての可能性を調べるため、本細胞の細胞特性を調べると共に分化したホルモン産生細胞の株化の可能性をクロニングで調べている。現在約13個のクロンが得られその細胞特性を調べているが、ほとんどがプロラクチン産生細胞であったが、引き続きクロニングを行い、生殖腺刺激ホルモンまたはGnRH受容体を発現する安定した株を確立を試みる。 3)去年まで明らかにした退行卵胞で現れるGnRH受容体の生理作用の機構を明らかにするため、本年度は脳下垂体を除去したラットにステロイドホルモンを投与し、卵巣でのGnRH受容体の発現量の変化をin situ hybridizationを用いて調べた。 4)カメ・ヤモリ・トカゲの濾胞刺激ホルモンと黄体形成ホルモン受容体蛋白質のN-末端部位のcDNA配列を明らかにし,脊椎動物における生殖腺刺激ホルモン受容体の進化とこの進化におけるホルモンとの関りを調べた。(現在論文投稿中)。
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