研究概要 |
脊椎動物の生殖内分泌系におけるペプチドホルモンの受容体の標的器官における発現調節とホルモンと結合した受容体の標的細胞内での挙動を解明することを目的に本研究を開始し、本年度には次のような成果が得られた。 1)ホルモン産生細胞の分化初期の胎児期の下垂体にGnRHを与えて、ホルモン産生能の変化を調べた。その結果GnRHの分化初期処理によりホルモンの産生能は変わらないがGnRHに対する反応性の増加が現れることを明らかにした。 2)ラットの生殖腺刺激ホルモン放出ホルモン受容体のcDNAをクローニングし、その塩基配列を明らかにした。そしてこのcDNAをプローブにし、生殖周期と卵巣摘出による脳下垂体内GnRH受容体遺伝子の発現変化を調べた。脳下垂体では前葉のLH・FSH産生細胞に特異的に現れた、これらのGTH産生細胞におけるGnRH受容体mRNAの発現は生殖周期の中で発情期には低かった。卵巣摘出の4日後に発現が有意的に上がり、17日間維持された。 3)生殖腺特に卵巣でのGnRH受容体の発現様式を調べた。卵巣内でのGnRH受容体を発現は未成熟の濾胞には見られず、主に成熟した濾胞の顆粒膜細胞と閉鎖を起こしている濾胞にも強く現れ、濾胞の成熟と顆粒膜細胞の分化にも重要な役割をしていることを明らかにした。 4)鳥類と爬虫類の濾胞刺激ホルモンと黄体形成ホルモン受容体蛋白質のN-末端部位のcDNA配列を明らかにし,脊椎動物における生殖腺刺激ホルモン受容体の進化とこの進化におけるホルモンとの関りを調べた。 5)片側潜伏睾丸を実験モデルにしてラットの精巣で精巣内温度による濾胞刺激ホルモンと黄体形成ホルモン受容体のmRNAの発現様式の変化をnorthern blotで調べた。腹内睾丸では両受容体共に陰嚢内睾丸と比べて、潜伏睾丸手術4週間後には顕著に増加すると共に、黄体形成ホルモン受容体のmRNAの分子サイズの多様性の変化であった。
|