被子植物において、開花前後の蕾から得た花粉を酵素処理によってプロトプラスト化し、培養によって細胞壁を再生させた再生花粉の機能発現について研究することを目的とした。 1。被子植物の花粉からのプロトプラスト分離を試みた。双子葉植物は100種以上のうち8種、単子葉植物31種中27種について分離に成功した。 2。テッポウユリの再生花粉をなるべく多く柱頭にのせるよう方法を改良したところ、花柱内を伸長し、花粉管が子房にまで達するのが確認できた。そして、低率ながら子房が膨らみ、種子形成に至った。 3。ユリ同士の花粉プロトプラストの融合体を形成させたとき、細胞壁の再生、花粉管の発芽・伸長、生殖核の分裂などの能力は、正常であると判断される結果を得た。伸長した花粉管は90%以上1本であった。大多数は花粉管核が先行したが、12%は生殖細胞が先行した。また、テッポウユリ花粉と他の種の花粉のプロトプラストを融合させた融合体では、伸長する花粉管は原則として1本で、先行するのは花粉管核であったが、どちらの種かは決っていなかった。また両種の生殖核ともに花粉管の中で分裂した。 4。テッポウユリの花粉と葉肉細胞と融合させたときも、花粉管の伸長がみられた。双子葉植物のソラマメ葉肉細胞、あるいはシダ植物のゼンマイ葉肉細胞と融合したときも同様であった。花粉管伸長という特殊な機能を持つ花粉は、他の体細胞と共存してもその機能は発現することがわかった。花粉管の中では生殖核は分裂し、また体細胞の細胞質(葉緑体)も花粉管の伸長に伴って移動した。 5。花粉への遺伝子導入の試みは、マーカー遺伝子としてβ-glucuronidaseを使用し、particle gunによって導入し、その遺伝子の花粉内での発現を確かめた。
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