研究概要 |
周生期に合成エストロゲン,diethylstilbestrol(DES)で処理した雄マウスの生殖輸管系のエストロゲン受容体、エストロゲン受容体mRNAの発現および細胞分裂活性を免疫組織化学的方法、in situ hybridization法で明らかにした。DES投与は24時間以内に副精巣、貯精嚢、前立腺および輸精管上皮細胞・基質細胞のER発現を誘導した。同様にERmRNAもDES投与24時間以内に発現していた。DES投与マウス雄性輸管系細胞の分裂活性は無処理対照群よりも有意に高かった。テストステロン、ジヒドロテストステロンの同様な投与は雄性輸管系細胞のER,ERmRNA発現を誘導しなかった。これらの結果は周生期のDES処理によるER発現が雄性輸管系に機能的な意味を持つことを示唆している〔Sato et al.,1994〕。マウス乳癌の自然発生と高血糖との関係を明らかにした。卵巣を摘出した対照マウスの膣では、エストロゲンに反応して細胞増殖、分化がおこるが、その際、fos、junのmRNAが一過性に発現するが、出生直後にエストロゲンを投与されたマウスの膣では、卵巣摘出により体内のエストロゲンを無くしても、fos、junのmRNAが恒久的に発現していることを見いだした(Fukazawa et al.,in pree)。SHNマウスにおいてstreptozotocinで誘導した高血糖が乳癌の発現頻度を増大させるた。乳癌の成長も高血糖により促進された。一方、この高血糖は子宮腺筋症および腺癌誘発頻度には影響を持たなかった(Goto,et al.,1995)。周生期に雄性ホルモン処理されたラットは成熟後無排卵性の不妊となるが、子宮の性ホルモンに対する反応性も著しく変化していることを明らかにした。生後5日目に雄性ホルモン処理をしたネズミで子宮のプロゲステロン・エストロゲン反応性を分裂活性・プロゲステロン受容体・蛋白質合成等に着目して調べた。各性ホルモン投与後の子宮重量は対照・雄性ホルモン処理群とも類似の変化を示したが、雄性ホルモン処理群では上皮細胞の分裂活性がプロゲステロンと同時投与したエストロゲンにより著しく増加する、上皮細胞のプロゲステロン受容体が消失するなど対照群との著しい差異が認められた。また、同ホルモン処理後抽出した蛋白質の泳動パターンから、雄性ホルモン処理群からら得られた蛋白質の種類は非常に少ないことも明らかとなった(Ohta,in press)。
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