1.ヒトヨタケのβ1-チューブリン変異株BEN193では、分裂装置の紡錘体は正常であるが星状体の形成に異常が見られ、野性型株では90%以上の分裂装置が星状体を持っているのに対し、BEN193ではほとんどの分裂装置は星状体を欠いていることがわかった。そこで、分裂核の定位・運動、隔壁形成(動植物の細胞質分裂と相同の過程)における星状体微小管の役割を知るために、野性型とBEN193の二核菌糸における分裂核の挙動と隔壁形成を詳細に比較した。その結果、星状体微小管は、分裂核の定位・運動には、直接関係しないが、隔壁形成の位置の決定に関与していることが証明された。 2.ヒトヨタケの微小管に関係する6座の遺伝子のうち、4座については遺伝子産物が未同定である。4座のうち1つmipAはその表現型の特徴からγ-チューブリンの遺伝子である可能性が考えられたため、γ-チューブリン抗体を用いたウエスタン・ブロティングによる分析を試みた。しかし、抗体の反応が弱く実験は不成功であった。そこで、現在のDNAレベルからの分析を行っている。 3.抗アクチンフィラメント剤サイトカラシンに対する耐性変異株CES14R80における、核の定位・運動について調べたところ、この変異株では、分裂核の定位が乱されていることがわかった。そこで、引き続き詳細な観察を行っている。
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