研究概要 |
ヒトヨタケにおけるチューブリン変異株のいくつかは分裂装置の星状体の形成を阻害することがわかった.そこで,この細胞学的欠損をDNA及びタンパク質のレベルで理解するために、まず野生型株のチューブリン遺伝子のクローニングとシークエンシングを行い、次にチューブリン変異株についても調査し、野生型と比較することを計画した。 1.β-チューブリンに関しては,ヒトヨタケのcDNAをプローブとして、ゲノム・ライブラリーをドット・ブロット法により検索し,1つのポジティブ・クローンを得た。そこで,得られたクローンがβ-チューブリン遺伝子の活性を持つことを、チューブリン変異株をrecipientsとしたトランスフォーメーション実験により確認した後、サブクローニング、シークエンシングを行った。その結果,この遺伝子は445個のアミノ酸をコードし,8つのイントロンをもつことなどがわかった.また,このクローンをプローブとしてゲノムDNAを調査したところ,ヒトヨタケは,β-チューブリンの遺伝子を1つだけ持っていることが強く示唆された.現在,変異株からβ-チューブリン遺伝子をクローニングする実験を行っている. 2.α-チューブリンに関しては,子嚢菌Aspergillus nidulansのα-チューブリン遺伝子をプローブとしてゲノム・ライブラリーを検索し,1つのポジティブ・クローンを得た。このクローンがα-チューブリン遺伝子の活性を持つことを、チューブリン変異株をrecipientsとしたトランスフォーメーション実験により確認した.菌類では多くの場合,2つのα-チューブリン遺伝子を持っていることが知られているので,現在,他のα-チューブリン遺伝子のクローニングを試みている.
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