研究概要 |
(1)未同定エクジステロイドの精製純化と化学構造の解析 昨年度に引き続いて,カイコの卵に新たに見いだされたエクジステロイドを精製純化し,質量分析(FAB-MS)と核磁気共鳴(NMR)法を用いて構造解析を試みた.その結果,今回新たに6種類のエクジステロイドの化学構造が明かとなった.それらは,3-エピ-22-デオキ-20,26-ジヒドロキシエクジソン,3-エピ-22-デオキシ-20,26-ジヒドロキシエクジソン-2ーリン酸,3-エピ-22-デオキシ-16(β),20-ジヒドロキシエクジソン,3-エピ-22-デオキシ-16 (β),20-ジヒドロキシエクジソン-2ーリン酸,2,22-ジデオキシ-23(S)-ヒドロキシエクジソン,2,22-ジデオキシ-23(S)-ヒドロキシエクジソン-3ーリン酸であった.これらのエクジステロイドはこれまで報告の例はなく,新しいエクジステロイドであった. (2)エクジステロイドの代謝系の解析 カイコ卵の発生に伴うエクジステロイド代謝を調べるために,まず,エクジステロイドの水酸化反応で,現在のところ最も上流の前駆体と考えられているketodiol(2,22,25-trideoxy-ecdysone)の放射性(^3H)ラベル体を化学合成した.つぎに,[^3H]ketodiolをカイコ卵(休眠卵と非休眠卵)に注入し,その代謝産物をHPLC-ラジオアナライザー系で分析,定量した.その結果,休眠卵,非休眠卵ともに[^<3H>]ketodiolは22,25-dideoxyecdysone,2,22-dideoxyecdysone,3-epi-2,22-dideoxyecdysone,22-deoxyecdysone,3-epi-22-deoxyecdysone,22-deoxy-20-hydroxy-ecdusone,ecdysone,20-hydroxyecdysoneなどの遊離型エクジステロイドとそれらのリン酸エステル(包合型)に代謝された.しかし,概して,休眠卵では抱合型が蓄積する傾向があり,非休眠卵では20-hydroxyecdysone合成の方向に進む傾向が見られた.このような結果は,卵におけるエクジステロイド代謝と胚発生が密接に関連していることを示唆している.
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