テトラヒメナの14nm繊維蛋白質の遺伝子をクローニングした結果、クエン酸合成酵素と高い類似性があることが明らかになった。そこで本年度は以下の4点について検討した。 1)テトラヒメナのミトコンドリアよりクエン酸合成酵素を精製し、重合・脱重合によって精製した14nm繊維蛋白質と、酵素活性、抗原性、酵素活性に及ぼす抗14nm繊維蛋白質抗体の影響などを比較検討した。その結果、酵素活性の至適pH、至適KCl濃度、ATPによる阻害効果などが全く同じであった。抗原性も全く同じであり、クエン酸合成酵素の活性は抗14nm繊維蛋白質抗体で阻害された。以上のことより、これら2つの蛋白質は同一のものであると結論した。 2)クエン酸合成酵素/14nm繊維蛋白質の重合・脱重合によって酵素活性がどのようになるかを検討した。その結果、重合すると活性は消失し、脱重合すると活性が出現することが判った。 3)クエン酸合成酵素/14nm繊維蛋白質が、増殖速度が遅くなった時期から定常期にかけて、ミトコンドリア内で繊維束を形成することを発見した。定常期の細胞を新しい培養液に移すと増殖が始まり、ミトコンドリア内の繊維束が消失した。このことは細胞内の基質濃度が下がると繊維束が形成され酵素活性が低下し、基質濃度が上がると繊維束が消失し酵素活性が上昇することを示唆する。 4)一つの蛋白質が全く異なる2つの機能を持つことが示唆されたが、遺伝子が1つか、あるいは類似した2つの遺伝子からそれぞれの蛋白質がコードされているのかを検討した。その結果、遺伝子もmRNAも1つであることが明らかになった。
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