本年度は、野外での計測に適した受信システム(とくに、水中アンテナシステム)を実用化することを目指した。FM受信機へ信号を入力する水中アンテナ(“aquaerial"と命名)は、16cmの長さのプローブ部が11個連結したものを製作した。各プローブは、信号の受信と増幅を行い、2mの同軸ケーブルで直列に連結されている。水中アンテナの総延長は、20mである。この水中アンテナを、幅約3mの河川の底に設置し、自由に遊泳しているニジマスの嗅球(嗅覚系第1次中枢)からの脳波信号をテレメトリーすることを試みた。その結果、魚がアンテナに沿って移動しても嗅球脳波が安定して記録出来ることが判明した。平成5年度の目的であった(1)野外の自然な河川での水中電波テレメトリーに適した受信システム(特に、アンテナ系)の開発、(2)単一神経ユニット用のトランスミッターの開発、および、(3)野外の自然な河川で自由行動中の固体からの神経活動(脳波)の記録、のうち、(1)に関しては、実用的なものの開発がほぼ達成されたと考えている。(3)に関しても、脳波活動のテレメトリーに成功したと言える。(2)に関しては、単一神経活動記録用のトランスミッターの製作にまでは、到っていない。平成6年度には、是非試作してみたいと考えている。また、新たな問題点として、魚体への負担を最小限にするため、トランスミッターの電源として小型の電池(電卓用の電池2個)を用いたところ、せいぜい2日弱しか信号を安定して送信出来ないことが判明した。今後は、魚体への負担を最小限にして、かつ、さらに長期間(4日以上)の送信を目指すことを計画している。
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