本年度は、北海道地域で、これまで著しく調査の手薄だった道東を中心とした海域での採集を行ってきた。釧路、厚岸湾など森林の伐採が広範囲に行われた近くの海岸では、透明度の悪さによって小型種の探索が容易ではなかった。これまでのところ、裸鰓類中のTergipedidae、のう舌類中のPolybrancheaceaで、問題のある種が発見されたことが特筆される。室蘭など噴火湾付近での調査、また留萌、小平など日本海側での採集でも、それぞれ興味深い発見があった。 さらに、寒流系の代表的なグループと考えられ、その分布域が東北以北とされていたものが、親潮影響海域の南端である房総半島銚子付近にまで分布を拡げている様子を捉えることもできた。採集を行うのにかなり危険な場所であるため困難は伴うが、その場所での餌動物との組み合せ関係も、現在研究中である。これによって、捕食者の分布拡大のプロセスを考察することができる。 また、これまでバリエーションとして扱われてきた問題について、タイプ別の分布域の比較調査、発生過程の比較研究などを通じて、良くは似ているがそれぞれ別の独立種であることを突き止めつつある。 初年度終了直前の現時点では、投稿中、準備中で、本報告書の裏面に研究発表文献を提示出来ず残念である。6年度以降、既採集種の比較解剖を行って記載発表をしつつ、さらに野外調査を拡大してゆきたい。
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