研究概要 |
種レベルの分類の再検討:キュー、ライデン、パリなど国外の主要なハ-バリウムから標本を借用し、東京大学ほか国内に所蔵する標本とあわせて比較検討して、各種について特徴と識別点を明らかにし異名を整理した。特に中国南部から記載された種類とタイ・インドシナから記載された種類を詳しく比較した。また、生植物については染色体も観察した。この結果、フデボテンナンショウ節(ここではMurata 1984の定義による)には25種があることが明らかとなったので、記載を伴う全種の集覧を作成し、検索表によりその区別点を明らかにした。 rbcL遺伝子の塩基配列の決定と比較:東京大学理学部附属植物園で栽培する生植物および科学研究費海外学術研究の現地調査などにより収集した生材料を用いて、東京大学理学部附属植物園の実験設備により、rbcL遺伝子の塩基配列の決定を行った。フデボテンナンショウ節以外の核節から8種、フデボテンナンショウ節からA.filiforme,A.laminatum,A.roxburghii,A.calcareum,A.grapsospadix,A.prazeri,A.petelotiiの7種、外群としてPinellia temataおよびTyphonium blumeiなど多くの資料についての塩基配列を決定し、コンピュータープログラムにより系統樹を描いた。この結果、サトイモ科全体の進化を考察する上できわめて示唆に富む系統樹が得られた。テンナンショウ属を含むアルム亜科は単系統であることが高い確立で支持された。フデボテンナンショウ節は単系統群ではなく、側系統群であることが示唆された。
|