研究概要 |
本研究の対象とするNosema bombycisが属する微胞子虫類は真核生物の中では、最も祖先型であるとの推測がなされている。しかし、申請者等が決定した5SrRNAの2次構造モデルから得られる結論はN.bombycisが典型的な真核生物型であることを示しており、真核生物の起源を探るにはさらに多くの情報高分子に関する解析が必要である。 本研究は、N.bombycisがその近縁種を材料として、複数の情報高分子について分析し、N.bombycisが属するMicrosporidia属の系統進化学的位置付けを再検討し、さらに真核生物の起源に関し、分子系統学的な考察を加えようとするものである。 N.bombycis以外のMicrosporidiaとしてN.bombycis弱毒系、強毒系、Varimorpha sp.M12,Pleistophora sp.に関して、これらの16S-like RNA遺伝子の配列を決定し、分子系統樹を作成したところ、それは必ずしも従来の分類とは一致しなかった。 また、rRNA以外の情報高分子として、elongation factor(EF)を選択し、そのconsensus sequenceに基づいて設計したprimerを用いて、PCR法およびcloningにより配列を決定することを試みた。得られた配列をアミノ酸に翻訳し、既知のEFのアミノ酸配列と比較したところ、微胞子虫Giardia lambriaのEFのアミノ酸配列と部分的に一致した。しかしこの一致の程度は低く、得られた配列が真にN.bombycisのEFもののであるか否かには未だ疑問の予知があるので、さらに検討中である。
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