研究概要 |
1992〜1993年にかけて調査した日本産コウモリに寄生していた条虫類はVampirolepis ogaensis,V.hidaensis,V.multihamata,V.rikuchuensis及びHymenolepis rashomonensisの2属5種、海外(インドネシアの東カリマンタン)産のコウモリに寄生していた条虫類はV.kobayashii,V.curvihamata及びV.glischrapiの1属3種であった。一方、日本産食虫類のトガリネズミ類に寄生していた条虫類はVampirolepis gracilistrobila,V.amamiensis,V.jakounezumi,V.tsushimaensis,Hymenolepis magnirostellata,Neoskrjabinolepis singularis,Coronacanthus parvihamata,Staphylocystis(Staphylocystis)naganoensis,Ditestolepis ezoensis,D.longicirrosa,Soricina japonica,Insectivorolepis macracetabulosa,Pseudhymenolepis japonicaの9属13種、海外(ネパール、サハリン、インド、ジャワ島)産食虫類のトガリネズミの寄生条虫類はS.(S.)katomanduensis,S.(S.)trisuliensis,S.(S.)magnisaccus,S.(S.)multihamata,及びS.(S.)furcataの1属5種であった。翼手目と食虫目は系統的には近縁といわれているので寄生条虫にも近縁種が多いものと予想して研究を進めてきた。しかし、前述したごとく、コウモリ類に寄生していた条虫類とトガリネズミ類に寄生していたそれらを比較するとVampirolepis属とHymenolepis属の条虫類のみが共通種で、トガリネズミ類の条虫類はコウモリ類の条虫類とは異なる(科の段階では近縁)多様な条虫種が寄生していた。これは翼手目のコウモリが空間へ、食虫類のトガリネズミが地中へと適応進化していったため、それぞれの食性(条虫類の中間宿主となる小動物)に相異ができたためであろうと考えられる。
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