本年は、研究費交付3年目に入り、本研究のしめくくりの年であり、研究成果のまとめに力をいれた。また、日本での1部の未調査地のコウモリおよび食虫類の条虫相を明らかにするため、採集も試みた。さらに北海道に近いシベリア地方のトガリネズミおよびネパールのトガリネズミ類の条虫相を明らかにし、日本のものとの条虫相の比較をおこなった。 これらの研究において、翼手類の小型コウモリ類には6属31種、食虫類のトガリネズミ類には12属58種の条虫類が寄生していることを明らかにした。この中で両者に共通して寄生していた条虫類はVampirolepis属、Insectivorolepis属、Hymenolepis属およびStaphylocystis属の条虫類である。Vampirolepis属の条虫類が最も多く、コウモリ類では17種(55%)、トガリネズミ類では17種(30%)、その他、Insectivorolepis属の条虫類で、コウモリ類では7種(23%)、トガリネズミ類では2種(3%)、Hymenoplepis属の条虫類は、コウモリ類では2種(10%)、トガリネズミ類では2種(3%)、Staphylocystis属の条虫類はコウモリ類で1種(3%)、トガリネズミ類では13種(22%)であった。これらの研究によって明らかになったことは、研究誌に発表した。 今後はさらに未調査の国々におけるコウモリ類およびトガリネズミ類の条虫相を明らかにして、条虫相の観点から両者の系統をさらに検討する必要がある。
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