研究概要 |
葉緑体のRBCL遺伝子を系統解析のマーカーとして、群体性オオヒゲマワリ目の分子系統樹を作成した。このために単細胞性オオヒゲマワリ目Chlamydomonasの2種C.reinhardtiiとC.moewusiiの既知の塩基配列を基にしてPCRによる遺伝子増幅の為のプライマーを作成した。次に、群体性オオヒゲマワリ目22種及び単細胞性オオヒゲマワリ目のCarteria cruciferaから全DNAを抽出し、作成したプライマーを用いてPCR法によりRBCL遺伝子を増幅した。増幅した遺伝子を用いてクローニングまたはdirect sequence法により自動DNA塩基配列決定装置で約1,100塩基対のRBCL遺伝子を決定した。得られた塩基配列及びC.reinhardtiiとC.moewusiiの塩基配列をPAUP 3.1を用いた最大節約法で解析した。その結果の系統樹は、異形配偶・卵生殖の群体性オオヒゲマワリ科の多くの生物が構成する単系統群の存在を高い信頼度で示唆した。また、Eudorinaelegansがその中で最も原始的である事も解析された。この事は昨年度の形態による系統解析結果(Nozaki & Itoh 1994)と基本的に一致し、E.elegansが保有する精子束に関する遺伝子がオオヒゲマワリ科の中の異形配偶の生物の最も原始的状態に近いものである事を示唆する。別の遺伝子DNAを用いる系統解析の予備的なものとして、葉緑体ssu rRNA遺伝子を基に緑藻類における系統解析を実施した。その結果の系統樹は、特異的な光合成色素をもつ海産種Chlamydomonas parkeaeが緑藻内部ではプラシノ藻ではなくオオヒゲマワリ目に位置する事を高い信頼度で支持した。この事及び緑藻類の全体の系統関係は電子顕微鏡レベルのデータと基本的に一致し、本遺伝子がオオヒゲマワリ目の系統解析にも有効である事を示唆した。また、ディファレンシャルスクリーニングの為のE.elegansを用いた大量の精子束誘導とmRNAの抽出の実験条件の確立も実施した。
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