研究概要 |
ラングミュア・ブロジェット法(LB法)を用いて、アラキン酸カドミウムとC15TCNQのヘテロ構造LB膜を作製し、次のような成果を得た。 (1)LB膜の累積比、X線構造解析の結果より、アラキン酸カドミウムLB膜はY型構造(2分子が向かい合った構造)であることが明らかとなった。 (2)TCNQLB膜は、基板の種類(疎水性or親水性)により、累積比がY型とZ型(すべての分子の親水基が基板側に向いた構造)の2種類をとることが明らかとなった。しかし、X線解析の結果では両者の薄膜ともX,Yの混相であることが示された。 (3)LB膜の均質性、表面平滑性を原子間力顕微鏡により検討した。その結果、分子レベルでの平滑性が確認された。 (4)アラキン酸カドミウムとC15TCNQのヘテロ構造LB膜を作製し、その電気特性を測定した。ヘテロ構造LB膜は腹面内及び腹に垂直な方向において、ほぼ絶縁体的性質を有することが示された。 (5)ヘテロ構造LB膜において、電流スイッチング現象を見出した。その現象とは、電気抵抗を測定する時にある電圧以上の電圧を印加すると、急激に抵抗が小さくなることである。 (6)電流スイッチング現象解明の為に、次の様な実験を行い、スイッチング現象の機構を評価した。 (イ)単独のアラキン酸LB膜では、電流スイッチング現象が見られない。 (ロ)単独のC15TCNQLB膜では、電流スイッチング現象が見られない。 (ハ)カドミウムを含んだC15TCNQLB膜では、電流スイッチング現象が見られた。 以上の結果より、ヘテロ構造LB膜の電流スイッチング機構は、カドミウムイオンとTCNQ間の電荷移動による相転移であると判明した。
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