最近、我々はGaAsの原子層エピタキシーにおいて、成長後の表面をP雰囲気中に置くと、表面のAs元素がP元素に置換する現象を見出している。このような現象の理解は、原子レベルでの界面急峻性を必要とする超格子デバイスの作製、またALE成長メカニズムの解明などに対して、新しい知見を与えてくれるものと考えられる。そこで本研究では、原子層エピタキシーにおける最表面層の元素置換現象が、III-V族半導体においてどのような条件でどのように起こるのか、III族元素の置換現象とV族元素の置換現象にどのような違いがあるのか、などの点を研究することを目的としている。 これまでに、III族元素をGaに固定し、V族元素の置換現象、特に表面のAs元素がP元素に置換される現象について、P雰囲気への接触時間やP_4分圧、成長温度などをパラメータとして成長実験を行った。そして、これらの成長結晶の組成変化を二結晶X線回折およびESCAにより測定することにより、置換量の定量的な測定を行った。 その結果、P_4接触時間、P_4分圧、成長温度の増加とともに成長層中のP組成が増え、As元素がP元素に置換されていく様子が定量的に求められた。その置換量のP_4接触時間および分圧依存性から、反応速度論的な検討を行っている。また、この置換現象の温度依存性から、表面のAs元素がP元素に置換する際の見掛けの活性化エネルギーとして、81.8kJ/molという結果を得た。 現在、V族元素の組み合わせを逆にし、表面のP元素がAs元素に置換される現象についての実験を開始している。
|