プラズマCVD法による窒化Si(SiNx:H)や酸化Si(SiOx:H)膜について、堆積条件を変化させて赤外吸収波形および膜ストレスの変化を調べた。行った解析および得られた知見は、(1)化学量論組成をもつ窒化Si膜について、高水素希釈比および高印加高周波電力の堆積条件下で、低内部ストレス、高絶縁破壊電圧、低エッチング・レートをもつ膜が得られた。この絶縁膜としての高品質化と微視的結合構造変化との間には密接な関係が見られる。高水素希釈、低印加高周波電力の条件下では低ストレスの膜が得られるが、絶縁破壊電圧も減少した。これはSi-NH-Si結合を多く含むN-richな領域とSi-richな領域が不均一に分布していることで説明できる。さらに高周波電力を増加すると膜は均一化して、Si-NH-Si結合の濃度に比較してN-Si_3結合の濃度が相対的に増加するというモデルを提案した。これらの結果については論文にまとめ発表済みである。 (2)当研究室でこれまでに提案している、ランダム・ボンディング・モデルに関連づけた電荷移動モデルを適用して、酸化Si膜におけるSiHおよびSiO結合からの赤外吸収波形の含有酸素量による変化を解析した。SiH伸縮モードの振動子強度を、上記モデルによりSiH双極子の電荷量を使用して求めた計算値は、実験的に決められた値と極めて良い一致を示した。さらにSiHおよびSiO伸縮モードに対する吸収ピーク波数は、酸素含有量と共に高波数側にシフトするが、これは主にSiHおよびSiOの結合長の変化によって決められ、またこれらの結合長はそれぞれの原子上の付加的な電荷量によって決められていると言うモデルを提案してピーク波数の計算値を求めた。その結果は実験値との良い一致を示した。また、SiHとSiO振動に関連したベンディング・モードについて、その原因となる結合構造について同定を行った。これらの結果については論文にまとめ投稿中である。
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