プラズマCVD法によって堆積したSi窒化(酸化)膜について、膜中窒素(酸素)含有量の変化に伴う結合構造の変化について調べた。 1)電荷移動モデルによる結合構造変化の解析 Si窒化膜やSi酸化膜におけるSiH伸縮赤外振動の吸収ピーク周波数はSi-H結合長に依存し、SiNやSiO伸縮振動周波数はこれらの結合長および結合角によって主に決められている。この結合長および結合角の変化は、SiやH、N、O原子上の付加的な電荷量の和の値によって決められていることを提案した。結果として、電荷移動モデルを用いて求められた構成原子上の電荷量の変化は、赤外伸縮振動の周波数変化と良く対応することを示した。特に、種々の化合物に対して観測されているSiH伸縮振動周波数の変化に関して、その変化をSiH周囲の結合構造形に関係づけて系統的に説明できることを示した。 2)SiH変角振動吸収信号に対する、分子軌道計算を用いた解析 Si酸化膜においては、500〜900cm^<-1>の周波数範囲にSiHおよびSiO変角振動に起因する赤外吸収信号が観測される。これらの信号の発生周波数は、Siに結合した酸素原子の数や、SiHとSiO結合の幾何学的位置関係によって変化する。SiH変角振動に関して、観測波形のシミュレーションによる分離結果および分子軌道計算による周波数の理論値を相互比較し、結合構造とSiH変角振動周波数との間の対応づけを行った。 上記1)および2)の結果を通して、組成変化に伴うSi窒化膜やSi酸化膜の結合構造の変化は、ランドム結合モデルによって説明できた。
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