研究概要 |
酸化物ガラスは、3次元網目構造を形成する網目イオン(Net-Work-Former:NWF)とそれを切断してその間隙に位置する網目修飾イオン(Net-Work-Modifier:NWM)とから成っている。このうちNWMは酸化物ガラス中では唯一の電荷キャリアーとなる。即ちそれは、電場下ではイオン伝導と誘電損失を、力学下では内部摩擦を、また化学ポテンシャル勾配下では自己拡散とイオン交換現象に寄与する。従って酸化物ガラスを応用していくとき、NWMの知見を十分に得ておくことは非常に重要である。 本研究は昨年度に引続き、珪酸塩とリン酸塩のガラスに注目して研究を推進した。即ち、波長2.5μm〜1mmの中赤外から遠赤外領域の吸収分光法とラマン散乱分光法、およびX線回折法、軟X線吸収分光法などの各種分光学的手法でそれらを測定し、酸化物ガラス中のNWMの短距離/中距離構造を系統的に調べることを試みた。これにより、珪酸塩ガラス(一部その溶融体)ではNa^+,K^+,Pb^<2+>のNWMの振動に基づく遠赤外領域における吸収キ-バンドを見い出せ、且つガラスとその溶融体中でのNWMの塩基性イオンとしての役割が約1〜3%異なることが判った。さらに、PbO-SiO_2系ガラスにはブリュアン散乱測定をし長距離構造を見ることも試みた。一方リン酸塩ガラスとしては、先ずその基本的構造を明かにするために、AlPO_4とKNa_<2x>Zr_<2-x>Mg_x(PO_4)_3の粉末結晶を作成し、その結晶化過程や結晶変態を上記分光学的測定により詳細に調べた。その結果リン酸塩に非常に重要な水の寄与を定量的に求め得る可能性を示せた。また副次的に100%純粋な各種結晶形態のAlPO_4の作成方法が開発できた。残念ながら阪神大震災のためリン酸塩ガラスの測定は十分には行えなかった。
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