研究概要 |
1.ポーラスシリコンを弗化水素酸水溶液中で陽極化成法により作製した.ポーラスシリコンのポロシティはほぼ0.5,ポーラス層の厚さはほぼ100ミクロンとなった. 2.作製したポーラスシリコン中での陽電子寿命とドップラー広がりを調べるため,試料を真空槽内にセットしその温度を12Kから300kの温度範囲でかえて測定した. 3.最長寿命成分は温度の上昇につれて45nsから35ns迄低下した.この寿命成分はその長さから判断して,明らかにオルトポジトロニュウムのものである.またドップラー広がりスペクトルは尖鋭化した. 4.3の結果から,ポーラス層の孔内部に放出されたオルトポジトロニュウムの寿命が温度上昇とともに短くなり,その原因はオルト状態からパラ状態へのスピン変換速さが速くなるためであることがわかった.変換速さの増加は,ポーラス層の不対スピン濃度が温度上昇につれてますのか,あるいはポーラス層を被覆していた残留気体が脱離していくためであると考えられる.いずれにしても孔の表面近傍には不対電子がかなりの濃度で存在することが明らかとなった. 5.中間の長さを持つ寿命成分は孔表面に捕獲された陽電子であることがわかった. 6.酸素分子の吸着効果を調べたところ,酸素分子はオルトポジトロニュウムの寿命を短くし,表面捕獲陽電子の寿命を長くすることがわかった.
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