1.電気抵抗がことなり、2Ωcmと0.02Ωcmであるシリコンウェファーを、弗化水素酸をもちいて陽極化成法によりポーラスシリコンを作成した。 2.作成したポーラスシリコン中での陽電子寿命と陽電子消滅ドップラー拡がりを、12Kから300Kの範囲の酸素ガス中と真空中で測定した。 3.電気抵抗が2Ωcmと高いウェファーから作ったポーラスシリコンでは、オルソポジトロニュウムの形成・消滅に対応する数十nsの長寿命が明瞭に観測された。しかしながら、抵抗が0.02Ωcmのように低いウェファーから作ったポーラスシリコンではこのような長寿命は観測できなかった。このことは、ポジトロニュウムの形成されるポーラス層の表面積密度が、高抵抗試料のポーラスシリコンの方が低抵抗試料のそれに比べて低いことを示している。 4.両試料とも、0.5ns近傍の格子欠陥あるいは表面に捕捉された陽電子の消滅を示す寿命が観測された。この寿命は温度が上がるにつれて長くなった。これは捕捉ポテンシャルの低い小さな欠陥からの陽電子の離脱と考えられる。 5.酸素分子は孔内に吸蔵されることが、オルソポジトロニュウムの寿命が短くなることから結論できた。 6.金属薄膜を孔表面にはることを試みたが、孔内部までは金属蒸気が侵入しないことがわかった。ポーラス層がウェファーを全厚にわたって貫いている試料を作成して金属量子孔を作ることを試みている。
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