研究概要 |
平成5年度に完成した時間分解発光測定系を用いて、スペクトル時間分解,空間時間分解,単色空間時間分解の3種類の配置で系統的に測定することにより、レーザー照射により生じる脱離粒子集団の空間的構造とその時間的発展について以下の知見が得られた. (1)平成5年度のグラファイトの大気中照射で観測された現象をより明確にするために,He雰囲気中で同様な測定を行った.そしてプルームがやはり時間的にも空間的にも3成分からなること,第二成分はプラズマによって駆動されたデトネーション波とブラスト波であることが分かった.これらの結果はJpn.J.Appl.Phys.に掲載される. (2)レーザー脱離の基本的研究として,1×10^<-6>Torrの高真空領域で単体のSi(111)を4倍波(λ=266nm.20J/cm^<2S>)で照射して脱離粒子の発光を観測した.そして非常に速く(>10^<5S>m/s)飛行するSiイオンとそれ続く(5×10^<4S>m/s)Si原子が明確に捕らえられた.また第二成分の速度の放出角依存性を決定した.これらの結果は投稿準備中である. (3)(2)と同じ系で照射強度を約1J/cm^<2S>に下げ、しきい値付近で脱離粒子の発光を観測した.このとき発光はもはや肉眼では確認できず、空間時間分解測定したできなかった.その結果.(2)の二成分の他に非常に遅く(2×10^<3S>m/s)広い速度分布の第三成分があることが判明した. 以上の結果より,本研究で開発した時間分解発光測定システムは,レーザー脱離により放出された粒子集団の動的過程について有力な情報を提供することが示された.特に、肉眼では確認できない粒子の挙動が発光測定で捕らえられたのは恐らく本研究が初めてであり,このシステムがいかに高感度かを如実に物語っている.しかし,これがこの系の検出限界でもあり,究極的な目標であった吸着分子の脱離の検出には至らなかった.
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