シリコン結晶にアンチモンを低温MBEの手法でδドーピングした試料を、本研究で開発した高分解能RBS法を用いて調べた。従来のSIMSを用いた研究ではドーピングされたアンチモンの深さ分布が、SIMSの深さ分解能に相当する約3nm以下であることが示されていた。今回、高分解能RBS法で測定したところ、アンチモンは0.6nm程度の広がりを持った分布をしていることが分かった。これにより、高分解能PBS法は、表面の定量分析では深さ分解能が最も良いされていたSIMSよりも、数倍以上深さ分解能が優れていることを示した。また、アンチモンのドーピング深さが数nm以下では、アンチモンの一部が表面に異常偏析していることが分かった。これは、アンチモンの拡散係数が、従来考えられていたよりもはるかに大きいことを示唆している。この詳細については、現在研究を続行中である。 高分解能RBS法を用いてPbTe/SnTe(001)およびAg/Si(001)のエピタキシャル成長の初期過程を観察した。その結果、PbTe/SnTe(001)では、従来の電子顕微鏡による観察から結論されていた様に、層状成長をしていることが確認できた。しかしながら、第一層が完全に成長する前に第2層が成長を開始しており、完全な層状成長とは異なっていることが分かった。Ag/Si(001)については、760Kでは0.5MLのみ銀が層状に吸着し、それ以上は成長しないことが分かった。また520Kでは0.5ML程度層状成長し、その後は島状の成長をすることが分かった。
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