初年度に当たる本年度は、電子顕微鏡試料を局所加熱するレーザー照射系の改良を行った。具体的には、光源としてこれまでの使用してきた半導体レーザーを補助金で購入したHeNeレーザーに切り換え、これに伴って、変調システム、照射位置微調装置、ならびに、集束レンズ系の手直しを行った。これにより、電子顕微鏡の試料面において、照射ビームの直径が14μmから10μmに縮小され、照射電力が6mWから10mWに上昇した。また、レーザーが可視光となり軸調などの調整がやり易くなった。 装置が完成するまで、従来システムを用いて蒸着アルミ薄膜(約100nm)の熱伝導率を測定した。これは、レーザー強度を変調して試料に照射・加熱し、試料上の局所温度を電子ビームの熱散漫散乱特性を利用して測定するものである。照射電力と試料温度の位相遅れより熱拡散係数を導出する。その結果、薄膜の熱伝導率は110±22W/Kmの値を得た。これはバルク材料での値の約46%に相当した。この結果は第13回国際電子顕微鏡学会に投稿した。また、電子顕微鏡を用いた温度計測の精度について検討した結果は、Meas.Sci.Technol.に投稿し、掲載された。
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