研究概要 |
昨年度の補助金で電子顕微鏡試料を局所加熱することのできるHe‐Neレーザー照射系が完成した。本年度はこの装置の軸調・集光特性を調べ、これを用いて薄膜の伝熱特性を測定した。 照射レーザービームの強度を変調して薄膜試料を周期加熱し、電子顕微鏡電子ビームの薄膜での熱散漫散乱効果を利用して試料温度を計測する。そのとき生じる加熱と温度の位相遅れより熱伝導率を算出する。そのさい、加熱の変調周波数をパラメータと選ぶことにより精度の改善が図られる。この方法は次の利点を持つ。(1)試料とは非接触で、空間分解能が高く取れる。(2)膜厚が30nm〜300nmの範囲の薄膜に適応可能である。(3)測定法は膜厚に依存しない。(4)試料形状や構造の観察と測定が同時に行える。 まず、種々の蒸着膜(Al,Sn,Ni,Sb,Ge,Cu,Mg,Biなど)について測定し、測定に適した材料と条件を調べた。次に、熱伝導率に対する結晶粒の大きさや膜厚に対する依存性を調べた。一般に、薄膜の熱伝導率はバルクの値の30%から80%の範囲にあり、結晶粒が大きくなるにしたがって熱伝導率はバルクの値に近づき、また、膜厚の減少と共に熱伝導率も小さくなる傾向が見られた。
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