研究概要 |
応用上重要な幾何学的最適化問題の次元は高々1桁であり,3を越えることは希である.そこで,今年度は最も応用頻度の高い2次元平面上の幾何学的最適化に関係する2つの問題の研究を中心に行い,以下のような成果を得ている.しかし,問題にはいずれも非凸型構造が含まれており,したがって従来これらを効率的に解決するアルゴリズムは知られていない. 1.2つの1次独立なn次元ベクトルによってその値が決定される準凹関数を制約条件に含む問題を解くためのアルゴリズムを開発した.この関数のクラスには1次関数の積などが含まれ,矩形面積に制約を受ける幾何学的最適化,例えばVLSIチップの設計などに応用される.ε近似解を求める比較的効率のよいアルゴリズムが既に知られていたが,開発したアルゴリズムの効率はこれを遥かに上回り,しかも常に厳密な大域的最適解を生成することができる.実際,ワークステーション上で計算実験を行ったところでは,同規模の線形計画問題を解くのと大差のない計算時間しか必要としないことを確認している.アルゴリズムの手続きには計算幾何学の手法を利用しているが,これも効率化の1つの原因となっている. 2.2つの1次独立なn次元ベクトルによって値が定まる鞍型関数を最小化するアルゴリズムを開発した.このクラスの問題も平面上での幾何学的最適化と切り放して考えることはできない.鞍型関数は一般に非凸型であり,複数の局所的最小点が存在する.しかし,準凹関数とは違って,制約領域の端点で大域的な最小点が達成されるとは限らず,これが問題の本質的な難しさとなっている.アルゴリズムは,問題を1次元の子問題達に分解し,その各々のε最適解を分枝限定法で計算している.分枝操作にはピボットなどの手間の掛かる演算が含まれないため,アルゴリズム全体の効率は極めて高く,ワークステーション上での計算実験もこれを裏付けている.
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