80年代半ばから急激に発達した計算幾何学は、次元が3までの問題をきわめて効率的に処理することができる。一方、これまで有効な解法の知られていない非凸型最適化問題でも、問題構造を利用することで次元が高々3程度の非凸型の親問題と一般次元の凸型子問題達に分解して処理できることが希でない。これまでの研究で、親問題の処理に計算幾何学手法を適用すれば大規模な非凸型最適化問題も現実的に解けることを示したが、今年度は子問題にも計算機学を応用し、主として非凸型のネットワーク計画問題を問題規模の多項式の手間で解決する研究を行った。 輸送問題は線形計画問題として広く知られており、ネットワーク構造を利用することで大域的最適解を問題規模の多項式の手間で求めることができる。しかし供給点から需要点への輸送費用だけでなく、供給点での生産費用まで考慮する「生産輸送問題」では、規模の経済の働きによって目的関数は凹型の関数となり、その大域的な最小化はネットワーク上であっても困難である。そこで各供給点から輸送可能な需要点の集合を分割し、需要の不足を1つの親供給点が補う問題について考案した。これは企業における本社と支社との関係をモデル化した現実的なものであるが、従来これを効率的に解決するアルゴリズムは知られていない。提案したアルゴリズムは、問題を本社に対応する非凸型の親問題と支社に対応する凸型の子問題達に分解する。子問題には計算幾何学手法を用い、問題規模に対して線形の手間で処理する。親問題の次元は定数とならないものの、その構造から計算幾何学を応用して問題規模の準多項式の手間で処理できる。その結果、問題全体として、最悪でも問題規模の準多項式の手間で大域的最適解を求めることが可能となった。 以上の結果は「最小凹型費用流問題」などの他の非凸型ネットワーク計画問題へ応用することも可能である。
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