研究概要 |
本研究では,大域的最適化と計算幾何学の両分野における研究成果を融合し,これまで有効な解法の知られていなかった非凸型幾何学的最適化問題の現実的な解決を試みた.応用上,特に重要な平面上の幾何学的最適化では,非凸型構造に着目して大域的最適化の手法を適用することで,いくつかの実用的な解法を構築できた.その主な成果は以下の通りである: 1.ランク2逆凸計画問題の大域的最適化:2つの1次独立なn次元ベクトルによって値が決定される準凹関数を制約条件に含む最適化問題を考察し,これを大域的に解くためのアルゴリズムを開発した.計算機実験によって従来のアルゴリズムより遥かに効率よく大域的最適解が得られることを確認した. 2.ランク2鞍型関数の大域的最小化:2つの1次独立なn次元ベクトルによって値の定まる鞍型関数を凸多面体上で最小化するアルゴリズムを開発した.計算機実験によって問題の大域的ε最適解が,かなり大規模な問題まで効率よく求められることを確認した. これらとは逆に,大域的最適化問題に対する解法の手続きとして計算幾何学を応用し,その計算効率を高める研究も行い,次のような成果を得ることができた: 3.生産輸送問題の大域的最適化:特殊構造のある輸送問題に対し,規模の経済が働く生産費用を考慮した費用最小化問題を考察し,最悪の場合でも問題規模の準多項式時間の手間で大域的最適解を生成するアルゴリズムを開発した. ここに挙げた問題に対して提案するアルゴリズムに共通の特徴は,特殊構造を利用して問題を複数の凸型子問題達に分解し,それらの解を関数値とする低次元非凸型関数を最小化する点である.同様な方法で分解可能な非凸型最適化問題は,幾何学的最適化に留まらず様々な分野に見ることができる.これらの問題も,また効率的な処理を期待できる.
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