〔1〕PMMA試験片中を約550m/sの速度で進展するき裂を用い、進展開始から18μs後と73μs後におけるき裂先端付近の応力場を実験的に調べた。測定には、パルスホログラフィ顕微鏡法、ホログラフィ・コウスティック法を用いた。その結果、以下に示す結論を得た。 (1)き裂に沿った方向においては、き裂進展開始から18μsと73μsの両方の時刻で、高次項成分の影響が現れていない。すなわち、き裂進展方向から180°の方向では、き裂進展開始後の時間に係わらず、特異平面応力場が成立している。 (2)き裂進行方向から72°の方向では、進展開始から18μsの時刻において高次項成分の影響が強く現れている。それに対して進展開始から73μs後では、72°の方向においても高次項成分の影響は無くなっており、き裂先端から5mmまでの範囲で特異平面応力場が成立している。 (3)き裂長さを一定に保った条件下で実験を行った結果、上記と同じ結果を得た。したがって、18μsの時刻に現れた高次項の影響は、き裂長さの違いによるものでなく、現象が過渡的であることに由来すると言える。 〔2〕ホログラフィ・コウスティック法により得られた上記の結果を検証するために、光干渉を用いた応力測定法を開発し、高速進展開始から18μs後と73μs後におけるき裂先端応力場を調べた。その結果、ホログラフィ・コウスティック法と同じ結果を得た。 〔3〕以上の結果より、高速進展開始直後のき裂においては、コウスティック法による動的応力拡大係数の測定に応力場の高次項成分の影響が現れると言える。
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