研究概要 |
多結晶体の成形限界の評価に関して,マクロ因子として材料異方性を,またミクロ因子として結晶内の変形と粒界のすべりを,それぞれ取り上げ数値解析的,実験的検討を行った.得られた結果は次のとおりである. 1.前年度の単板での変形局所化の解析を積層複合板に対する解析に拡張し,材料異方性の成形限界に及ぼす影響を把握した.その結果,積層板の構成部材や板厚を変化させることによって競合効果が現われ,くびれの発生時期を大幅に遅れさせることがわかった.また,複合板の変形挙動で特徴となる面外変形挙動についても解析したところ,実験結果と定性的に一致することが確かめられた. 2.多結晶材料のより直接的なシミュレーション法として,ボロノイ多角形群から疑似多結晶体を作成し,各結晶粒に単結晶の構成式を,また結晶粒界に非線形すべりモデルを,それぞれ適用し数値解析を試みた.結晶粒内のすべり方向によって非一様な変形が表れ,数個の結晶粒をまとまりとしてひずみ集中が観察された. 3.結晶粒を粗大化させたA1試料の表面にグリッドを作成し,変形にともなう自由表面の状態を観察した.その結果,特に大きな結晶粒内では平らな領域が存在することが明かになり,結晶粒界を境に凹凸が変化することがわかった.これは粒界の剛性(強度)が変形挙動に大きな影響を及ぼしていることを意味している. 4.表面状態の統計的な性質を明かにするためスペクトル解析を試みたところ,第一のピークとして5ないしは6結晶粒で,さらに第2ピークとして2,3の結晶粒で,それぞれ粗面化が進行することが明かになった.特に第2のピークは,上記の2.および3.の結果に対応している.今後第1のピークを理論的解析的に明かにする必要があることが示唆された.
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