研究概要 |
実験材料として,繊維強化複合材料である一方向強化カーボン/エポキシ積層板を採用した.またDCB(Double Cantilever Beam)試験片を用い,き裂先端近傍におけるき裂の開口変位をモアレ干渉法を応用して計測した.本年度は,これらの計測結果を用いて,層間破壊のき裂先端で生じる変形を解析した.その手法としてき裂先端における境界条件が変形を拘束しないような新しいDCB解析モデルを考案した.このモデルが従来の初等梁理論と異なる点は,き裂先端近傍の変形を考慮した解析,すなわち局所的な応力やひずみの計算を行なうことを可能としたことである.本研究では,き裂の開口変位の測定値と解析結果の比較を行ない,き裂先端部の層間剛性を評価した.また得られた層間剛性を用いて破壊靱性および層間ひずみを評価し,以下の知見を得た.すなわち, (1)本研究で提案した解析モデルが開口変位の測定値と定性的,定量的に良く一致することを示した. (2)き裂先端での層間剛性は、繊維と垂直方向の縦弾性係数より大きく低下すること,またき裂進展とともに変化することを明らかにした. (3)靱性値評価においてき裂先端の剛性が重要な役割を果たすことを実験および理論的に証明した. (4)き裂先端の剛性が小さいときはく離に至るまでの変形が大きく,逆に剛性が大きいとき変形が小さくなることを示した. (5)新たに得られた上記の知見については,日本機械学会(平成6年10月)において発表した.なおその内容については国際誌(International Journal of Fracute)に投稿中である.
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