研究概要 |
電解液ジェット加工は微細なノズルより高圧な電解液を工作物に向けて噴出し,工作物を陽極,ノズルを陰極として極間に電圧を印加して工作物を電解溶出させる加工法である.化学的加工法のため熱影響層や残留応力などの加工変質層がなく,加工量の制御や加工位置の制御は,電流やノズル位置を制御することで容易に行える等の特長を有している.そこで,前年度(平成5年度)には転がり軸受面に対して微細ピット加工を施し,油膜形成能力を増大させることによって軸受寿命を向上する用途に応用した. 今後さらに,半導体への微細なパタ-ニングなどに応用を広めるためには,加工速度の向上,溝幅の縮小化,加工断面形状の制御などが必要である.そのために平成6年度では,使用するノズル,電解液の種類,加工電流,加工電圧等の加工条件に対して,得られる加工形状を予測できるシミュレーション手法を確立することを目的とした. そのシミュレーションのアルゴリズムは以下に示すとおりである.まず,与えられた加工電流に対して電解液中の電圧降下を仮定し,電解液中の電位分布を有限要素法により計算し,それから工作物面上の電流密度分布を求める.そして,電流密度を工作物面上で積分して理論的な加工電流を求め,これを実測した加工電流と比較する.そして,理論値と実測値が一致するときの電解液中の電圧降下を求める.これより改めて電解液中の電位分布と工作物面上の電流密度分布が求められる.次に,求めた電流密度分布と実験的に得られた加工形状を比較して,電流密度と電流効率の関係,ならびに鉄の等価的溶出価数が求められるので,それらを考慮することによって,異なる加工電流やノズル直径に対しても加工形状の予測が可能となる. 本年度は,上のシミュレーションアルゴリズムを確立し,異なる加工条件下で加工形状のシミュレーションを試みた結果,加工形状を精度良く予測できることが分かった.したがって,本研究で確立したシミュレーション手法を用いれば,ノズルを任意の軌跡で動かしたときに得られる3次元形状の加工結果についても予測が可能であると思われ,今後3次元形状加工への応用を試みていく予定である.
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