研究概要 |
これまで切削加工における作業設計は,実質的に熟練者のノウハウに依存してきた.しかし,高度な生産システムにおいて,信頼性の高い加工を実現する場合には,熟練者の知識ノウハウの取り込み方が,重要な鍵となる.そこで,本研究では,切削条件決定問題の中から切削力と切削温度をwell-definedな問題として抽出し,定量的な解析解を参照して切削条件選定におけるノウハウの本質はどのようなものかを明確にすることを目的とする. ill-definedな問題とされている切削条件決定問題の中からwell-definedな問題を抽出して切削技術者に体験させる,という当初の目的は,切削温度についてはかなり達成された.当初は,突っ切りや外周切削などの切削様式については,ほとんど考慮していなかったが,工具とホルダーの三次元形状と潤滑・冷却状態に応じて,切削様式の違いを具体的に取り込むことによって,切削様式と切削温度の関係が,CRT上で明確に体験できるようになり,標準的な切削条件選定基準と切削温度との関係が明確になった. 本年度は切削温度に予定以上に重点をおいたため,切削力に関する問題の解決は,後回しになった.しかし,切削様式の相違と切削温度の関連が,熟練技術者の切削条件選択基準とよく対応することを明らかにできたことにより,ノウハウの可視化と利用に対して一つの本質的な問題が解決できた.
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