研究概要 |
ダイヤモンド単結晶育成装置には,大結晶を得るためにできるだけ大容積の高圧領域が長時間安定に得られることが必要となる.熱膨張拘束による高圧装置は,大型プレスや圧力媒体を必要とせず,摺動部が存在しないので,構造が単純であることから,装置の大型化か従来の機械的加圧方式の高圧装置と比較して容易であり,圧力の発生に摩擦を伴わないので,装置の大型化に見合った体積の高圧領域が得られることが期待できる.前年度において,熱膨張拘束による高圧装置では摩擦力が生じないことを利用して,拘束力を測定することにより連続的に圧力を監視する方法を提案し,この圧力測定方法によって本装置を用いてダイヤモンド合成可能な高圧の発生が可能であることが推定された.熱膨張拘束による高圧装置では,黒鉛からダイヤモンドに変態する際の体積収縮により発生圧力が低下するために,ダイヤモンド合成量は熱膨張体の体積に依存し,その体積に応じて合成量には上限が存在すると考えられる.しかし,ダイヤモンド育成装置として使用する場合,炭素源としてダイヤモンド微粒子が用いられることから,このような問題はないと考えられる.そこで,ダイヤモンド単結晶育成装置としての適正を示すために,本装置に黒鉛試料を高圧室に挿入し高圧発生実験を行い,拘束力の測定による圧力監視システムを用いて上記高圧室がダイヤモンド合成可能な高温高圧状態となることを確認し,このようにして得られた試料についてX線回析を行った.その結果,ダイヤモンドの(111)および(220)面に対応するピークが検出された.これより,1.本装置によりダイヤモンド安定な領域の高温高圧が発生されること,および2.拘束力の測定による圧力監視システムにより,ダイヤモンド合成可能領域の高温高圧においてもほぼ正確に圧力を測定できることが推定された.
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